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藤先生、医療ボランティア体験記

[2011.10.20]

東日本大震災から半年が経った平成23年9月10日から11日にかけて、私は東北に医療ボランティアとして赴きました。震災後、新聞やテレビで東北における大きな被害を目にして、何かしなければと思いながらも、具体的には何もできないまま月日が経ってしまっていました。その申し訳なさもつのって、思いきって、ボランティアに参加をすることに決めました。

1日目は福島県いわき市を訪れました。いわきは地震そのものの被害はあまり目立ちませんでしたが、福島原発の事故による放射能汚染の問題は人々の生活に甚大な影響を与えていました。私が診察したある方は郡山にお住まいだったのですが、子供たちが夏でもマスクを着用し、長袖の服を着て通学し、校庭に出ることはなく、ずっと室内に滞在していることや、自宅の近くにも溝などに放射線量の高いホットスポットがあるが、捨てる場所がないので溝掃除をすることは行政から禁止されていることなどをお話しくださいました。放射能は目に見えないだけに、人々の心にいわく言い難い不安をもたらしており、今後、精神的サポートとともに、除染や食事等の具体的なアドバイスが必要とされていることを感じました。

2日目は宮城県石巻市を訪れました。震災で大きな被害を受けた石巻でも、街中はがれきがかなり取り除かれていました。しかし、海岸に行くと、壊れた車がうず高く積まれ、工場は1階部分が打ち抜かれたようになり、傾いた石油タンクはそのままになっていました。私たちは津波で大きな被害を受けたある個人のお宅にお伺いし、診察を行いました。そこにはご近所の方も集ってくださり、私たちを温かく迎えてくださいました。そのお宅は震災のとき、1階が津波で泥だらけになったそうですが、ボランティアの方々の力も借りて清掃し、私たちの訪問時にはすっかり綺麗になっていました。

一見、皆さんお元気そうに見えましたが、実際に診察させていただくと、不眠症や低体温の方が多く、精神的に大きなストレスを抱えていらっしゃることが推察されました。会社の2階に逃げたときに、十数秒の差で間に合わず、目の前で同僚が流されてしまったという方や、一番仲よくしていた妹さんが未だ見つからない方もおられ、この震災がどれほど深い痛みを人々の心にもたらしているのかを目の当たりにして、私はただお話を聞かせていただくことしかできませんでした。

今回、短期間ですが東北にボランティアとして行かせていただいて、テレビや新聞では知ることのできない震災の現実の一端に触れ、「こんな私が行っても大したことはできないのでは・・・」という思いから、「微力かもしれないが、それでも何とか力になりたい」という思いに変わったと感じています。東北の復興までにはまだまだ時間がかかると思います。今後も何らかの形で東北の方々の御支援ができればと願っています。

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